ガガガ文庫フルコースの箸休めをひとつ。お題は『パステル都市』(著:M・ジョン・ハリスン、訳:大和田始、サンリオSF文庫)
はるかな未来。“午後の文明”の崩壊後に誕生したヴィリコニウム帝国は、古代文明の遺産にすがりながら栄華を保っていた。かつて帝国の騎士団員として活躍したクロミスは、詩人に身をやつし隠棲している。その耳に届いたのは、北方民族によるヴィリコニウムへの宣戦の知らせ。祖国の危機に、クロミスはかつての戦友とともに立ち上がった。
遠未来を舞台にした、由緒正しきヒロイックファンタジー。物語に華を添えるのは、古代文明の遺した兵器の数々。エネルギー剣《バーン》や、機械人形“ゲテイト・ケモジット”、金属のハゲワシ、しまいには飛行艇まで登場する。蹂躙される祖国、旧友の裏切り、古代の死都、亡国の女王などなど、そのままFFに放り込めるようなモチーフがてんこ盛り。
“錆の砂漠”や“パステル都市”のイメージも鮮烈で良い。ちなみに1971年に書かれた作品である。
この話を作者は250ページ足らずで強引に畳み切っている。その分、ラストがやや急ぎすぎた感があるが、現代のファンタジー作家に書かせたら薄めまくった末に三部作になるだろうからこれで良いと思う。
今作よりもさらに面白いと本国で評判の、同じ未来史上に位置する作品『翼の嵐』はサンリオSF文庫刊行予定。
みなさんお察しのとおり、未刊である。
つい昨日書店で知りましたが、ヴィリコニウムものは本国では一冊にまとめられているようですね。復刊・再評価ラッシュの流れに乗って国書刊行会あたりから刊行されないかひそかに期待しております。