期待賞二冊目は『7/7のイチロと星喰いゾンビーズ』(著・羽谷ユウスケ、ガガガ文庫)
七重人格者である明神一郎は、友人を喪い悲しみに打ちひしがれる少女・結衣子と知り合う。結衣子の友人の死の真相を探るうちに、一郎は、知らず知らず、人類を脅かす存在「星喰い」と、その狩り手「夜祓い」との戦いに巻き込まれていく。
構成力がないのに複数視点を用い、かつ自分の書きたい要素をぶち込んでいるので、いびつで追いづらい話になっている。
そもそも、七重人格という設定も必然なく安直に用いられている。(腕っぷしの強い人格や推理力のある人格、ピッキングが出来る人格もいる。便利なことだ。ただ主人格が一番の駄目人間というのは新しい)
また、サブキャラには、出所のよくわからない「憑き物遣い」という異能者がいるが、話の本筋である異質な存在「星喰い」と特に関係があるわけではない。(七重人格設定も、「星喰い」とは何の関係もない) 何の前置き・伏線もないまま、今までの話とぜんぜん違う要素を次々放り込まれても読者は困る。
特筆すべきはその憑き物遣いが敗死するシーン。彼は、作中で一度も言及されなかったその能力を、モノローグの洪水で説明した挙句に、敵の手にかかって屠られる。「憑き物遣い」という言葉が初登場してからわずか10ページ。噛ませ犬というではない。作者の中では格好良いシーンらしいということはひしひしと伝わってくる。それでも、ひとひねりあるクライマックスだけはわりあい盛り上がる。
タイトルが正式には、『“探し屋”クロニクル 7/7のイチロと星喰いゾンビーズ』であることや、回収されていない伏線があることから、作者が続編を書く気満々というのも痛いほどよく分かった。
こういう風に、婉曲的に批判すればいくらでも書けるが、一言で済ますことも出来る。「カオス」と。