前回のワークブックで積み残したぶん(期待賞の五冊)をようやく読み終わりました。本日より、皆さんお待ちかねのガガガ祭りを開始します。しばらくの間、文章がお見苦しくなること、ご容赦下さい。
まずは第一撃。「さちの世界は死んでも廻る」(著・三日月、ガガガ文庫)
女子高生・吉岡さちは、念願かなって憧れのクラスメート、高田アツミと付き合うことに。ところが、生来のドジであるさちは、浮かれるあまり前方不注意で、ダンプにはねられ死亡。なぜかゾンビになってしまう。実はゾンビを狩る組織の一員であったアツミにその身を狙われることになり……
人物造形が完全に破綻している。というのも、ストーリーの都合によってさちとアツミが愛し合ったり殺したいほど憎み合ったり、ころころ気持ちを変えるからだ。さしたる動機もなく簡単に殺意を抱き、単純に和解する二人。情景描写に問題が少ない分、心象描写の致命的なばかりの崩壊が目につく。作者がまったく意図せずに主人公がヤンデレ(というか人格崩壊)になってしまった稀有な作品だ。
幻覚を見せたり空気の矢を放ったりする能力や、そもそもさちがゾンビになった理由などの設定についても、全く説得力がない。各キャラクターの台詞も、気恥ずかしくなるくらい陳腐な言葉の連なり。
戦闘の中で二人が初めてお互いを認識したときには
「……………………えっ?」
「……………………嘘、だろ?」
とか言う。無意識に重ねられたベタ台詞の山は読者を赤面させる。
それでも、バトルだけ取り出すと『携帯電話俺』よりまだ面白い。いや、比べる対象が間違っているか。