本日の一冊は『Re:ALIVE? 〜戦争のシカタ〜』(壱月龍一、ガガガ文庫)。第一回小学館ライトノベル大賞佳作入選作です。
戦争が起きているらしい。戦死者ゼロの奇妙な内戦。
けれど、いち高校生に過ぎない拓真颯にとって、『戦争』はテレビ画面の向こうにあるものでしかない。バンドのメンバーや恋人と、平穏な日々を送る颯。
だが、彼の預かり知らぬところで、友人たちは戦争に加担していた。―――偽りの平和が破られたとき、颯が突きつけられたものは、冷酷な真実と、裏切りだった。 ……というお話。
各章タイトルや、冒頭に掲げられる陶酔気味のポエムから(鳥籠と書いてせかいとルビをふっちゃってます)想像されるような地雷作ではありません。日常生活・友情→非日常・命の取り合い、という筋立て自体は目新しいものではありませんが、登場人物のキャラが立っていることもあり、テンポよく読めます。改行が多く、基本的には一人称俺語りであることもそれに寄与してますね。
この作品に難癖をつけるとすればひとつ。これは戦争じゃない、ということ。
この小説世界で行われる「戦争」は、いわゆる戦争とは根本的に違うものです。強化人間が出てきます。ドクターが登場します。魔眼が用いられます。薬を服用してパワーアップします。はっきりいえば、少人数の人外バトルで決着がつく「戦争」です。
だから今のところ、戦争というテーマを扱った重厚な意欲作、という感じは受けません。近年、大量生産されている、「身近な人間とも戦わなければならない」小説の中で特に飛びぬけている点はないように感じられます。
決断主義的な作品群に含まれると考えてもよいでしょう。この一冊がそれらの作品のうちで、突出したものになるかどうかの判断には、次巻を待たねばなりません。