2007年06月20日

『携帯電話俺』

 こんにちは。ライトノベルの孤島で僻地医療に従事する者です。
 当方、ただいまガガガ文庫全レビューに向けて同文庫の本ほぼすべてを購入しており、財政難です。なので、ガガガ文庫の評価が辛くなってしまうのも仕方ありませんね。

 『携帯電話俺』(水市恵、ガガガ文庫)は第一回小学館ライトノベル大賞佳作入選作。
 ある朝、目覚めると携帯電話になっていた、という冒頭の異常なシチュエーションはともかく、ストーリーは全く面白くない。
 前半、携帯電話になって覗き見する大学生の恋愛模様が地味。ドラマ性希薄。
 中盤、唐突に謎の館に移動、強引に魔法ものへ。
 後半、とってつけたような姉妹愛の物語もひどく薄っぺらい。
 全体としてみると、山場が無く、まとまりに欠けている。なによりつまらない。

 許せないのは、あとがきで作者が「魔術師とか出てきますから非科学的なものが許せない人が読んでも面白くないですよ」みたいなことを書いている点。問題はそこじゃないよ。
 この小説が抱えている欠陥は、魔法ものとか好きな人間が読んでも微塵も面白くないことである。作者は、「主人公が携帯電話になる」ことのらくな説明として魔法を持ち出しただけであり、魔法全般についてろくな設定をしていない。というより何も書いていない。魔術師たちの背景説明も少ない。なのに魔法バトルをさせるものだから、延々、光の玉を投げ合うことになる。
 ライトノベルの「魔法」を馬鹿にしているような印象を受けますが。

 視野が携帯電話のカメラのそれの範囲にまで限定されてしまうとか、電源を切られない限り眠ることができないとか、携帯電話の送話口が聴覚器になっていて、聞き取れる音の質が人間とまったく違うとか、『携帯電話から見る世界』はものすごく丁寧に書かれています。評価できる点はそれにつきます。
posted by 狂乱 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 今日の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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