2014年05月11日

5月9日『白熱光』読書会

新歓イベントも半ばに差し掛かった5月9日に、グレッグ・イーガン『白熱光』の読書会を行ないました。
担当者及びブログ更新者はnormです。
イーガンの作品で読書会をしたいとは以前から思っていたのですが、既にイーガン好きの会員がいるということもあり、独自色を出したいということで邦訳最新作の『白熱光』を選びました。
参加者は新入生4人を含む13人でした。会員のみならず、新入生の中にも作品を読破した人がいたということで感謝の一言に尽きます。
『白熱光』は難しいけど、短編はそんなに難しくなくて面白いから。短編も読んでみて。と祈る担当者です。そもそもイーガンがはじめての人に読ませる作品じゃなかった

この作品は、奇数章・偶数章で物語の筋が別々になっているということでしたが、奇数章の冒頭と偶数章全般が難しいのでその解説を中心に読書会を進めていきました。
奇数章は『順列都市』『ディアスポラ』を読んだことのある人なら何となくこういうものだということが分かるものだったのですが、そうでない人にとっては難しいものだったようで、「そもそも前提として光速を超えない」とか、「人格のデータがネットワークを送受信することはその人が行き来することと同じ」とか、ひっかかるポイントはあったようです。
偶数章は物理学の発見ということが大きなテーマでしたが、「ミステリとしての面白さ」もあるという会員の感想もあり、〈スプリンター〉と(奇数章でラケシュとパランザムが訪れる)方舟は同じものなのか(ネタバレ反転)、〈鋼鉄製造者〉は結局何者だったのか、〈放浪者〉はどんな天体なのか、といったようなことが作品中からはっきりと分かるのか、推測しかできないのかという話がありました。「孤高世界の行動原理がよく分からない」という指摘もありました。それだけのテクノロジーがあるなら、追い返すのではなくブラックホールに対処できるはずだろう(ネタバレ反転)といったような意見も。

読書会では、思い切りネタバレをして分かったかどうか確認をしながら進めましたが、難しい作品ということもあって、かなり誤解があったようです。ハブの正体(重力レンズ効果(「そもそも質量が力を作るということに気付くのがかなり後」という意見も)でも気付くが、その前に事象の地平面の話が出てきて分かる(ネタバレ反転))や、物語全体の時系列を把握するのが特に難しかったようです。かく言う私自身も、物語の冒頭に、ある謎の一つに対してほとんど答えのような描写があるということを、会員の指摘で知りました。「どうしてラケシュは最後まで気付かなかったのか」という話も。2回目読み直すのは楽しそうだねという声が会員と新入生の中からも聞かれました。

その後、話は物理学に移り、〈スプリンター〉には相対論的効果がはたらいているのだけれど、そもそも相対性理論というのは何だったかとか、平らな降着円盤はどのように見えるのかなどについて話しました。あっという間に時間が無くなってしまい、最後の方は駆け足で終了しました。
読書会も終わり、夕食に向かっている途中で新入生に話を聞いたところ、「〈スプリンター〉は飛んでくる小さい隕石で壊れないのか」「生物のところでケチをつけようとしたが無理だったので流石だった」といった話が聞かれ、(ハードSF的な読み方をしている!イイね!)と思いながら楽しく話していたのでした。

今回の読書会は、普段とはかなり異なる雰囲気となりましたので、また別の読書会にもいらして頂けるとうれしいですね。次回は13日、『パシフィック・リム』の上映会となります。ぜひお越しください。
posted by KUSFA at 11:16| Comment(1) | TrackBack(0) | 読書会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
誤解のないよう、一応弁明しておくと担当者はこの作品がかなり好きです。ラストシーンを読んだ時に「ついにやってくれたな」と独り言を言ってかなり目頭を熱くしました。
Posted by norm at 2014年05月11日 11:43
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