2013年10月31日

SF句会 当日の結果報告

これまでのあらすじ
1『SF句会の告知(http://blog.kusfa.jp/article/374272976.html)』
2『続・SF句会の告知 「句会ってどういうものなの?」編(http://blog.kusfa.jp/article/374273302.html)』
3『SF句会:破 清記発表(http://blog.kusfa.jp/article/376960155.html)』


長らくお待たせいたしました。
京フェス合宿にて、京大SF研の有志が企画しました「SF句会」の簡単なまとめを掲載いたします。
このまとめでは、句会中に時間の都合上で言及されなかった句にもコメントがついておりますが、そこでは後に京大SF研の参加者間で句評を募ったものを参考にしております。

まずは、投句や見学をしていただいた方は誠にありがとうございました。
おかげさまで、SF句会は多くの方にご参加いただき、大盛況の中無事終了いたしました。

それでは、以下のまとめをご覧ください。


特選:◎ 並選:○ 逆選:●

1 エイリアン待ちかねてゐて夜寒かな ◎○○
今回一番のモテ俳句でした。「エイリアンの恋人を待つ句」という風にロマンチックな解釈が多く、シオドア・スタージョンの『孤独の円盤』を連想したという参加者もいらっしゃいました。「エイリアンのように真意がわからない恋人」という比喩表現だと捉える外部の声もあれば、降りてくるエイリアンを「早く降りて来い 殺してやる」と血気盛んなオッサンたちを連想したという声もありました。

2 狗尾草高次の紐を絡めたし
「狗尾草」はエノコログサと読むと18音ですが、ネコジャラシと読むのだろうという司会(セーラー服姿)の推測が入り、字余りではないとの判断でした。「高次の紐」という抽象的なイメージから上手く想像できない参加者も複数いらっしゃいましたが、猫とじゃれている和やかな風景をイメージされた方は多そうです。「高次の紐」から素粒子物理学者を連想した人と、上位存在としての猫を連想した人がいらっしゃいました。

3 神々の黄昏(ラグナロク)永らえて今日茄子を煮る ○
季語は「茄子」で夏ですが、ラグナロクの季節はいつなのだろうという解釈が盛んに行われました。黄昏だから秋だという説、何度も冬が来るのだから冬だという説、氷と火と死者と再生のイメージなので春だという説などなど。ラグナロクと茄子の距離感、世紀末と日常ほのぼの感が素敵だという話でした。

4 施術後に秋刀魚食うきみ左利き ○○
外部の方も巻き込んで解釈が盛んに行われた句です。義手派もあれば、脳手術派もおり、実は視点人物の方が脳手術をしていて左右が逆転しているのだ、といった声もあがり、楽しげな解釈が飛び交いました。

5 エリセ観る数値海岸秋彼岸 ●
「ビクトル・エリセ」と「数値海岸」で二重に既存作品・作家をモチーフにしていたことがネックとなってか、イメージが結ばなかった人が多かった印象です。とりわけ、エリセに反応できなかった人が多いようです。逆選にした方からは、切れが複数あることや、ラップのような最後がやり過ぎとの意見も。エリセの映画を観たことがある方の解釈では、『ミツバチのささやき』、『エル・スール』や飛浩隆の〈廃園の天使シリーズ〉に共通する「あちら側」と「こちら側」のモチーフを、映画のスクリーンのイメージに重ね合せたものが提示されました。

6 カナカナや月の警官どもが死ぬ ○○
「月の警官」という言葉の意味不明さと素敵さから色々と情景を想像される方が多かったです。月面都市をイメージされた方もいれば、「たま」というバンドをイメージされた方も。擬音・擬態語を使った句として目を引いたという意見もありました。「『カナカナ』と『月』で季重なりだと思ったが、『月の警官』で一塊だから、『カナカナ』の方がメインなのかもしれない」とは司会の解説でした。

7 月が綺麗でしあわせは決められて ◎●
逆選と特選の入った句でした。句跨りであることや、音の綺麗さ、対比の美しさなどを評価する意見が多かったです。遠くにあるものと個人的なものという感じで。一方で、ディストピア以外にイメージが広がらない点を批判する意見もありました。

8 見たままを描いただけだと女郎花 ○
「見たままを描いただけ」というこのフレーズに惹かれたという賛辞がありました。SF的な連想の働かなかった方も多かった印象でしたが、宇宙人やらの人類と異なる認知能力を持った人間が女郎花を描いた場面や、あるいはSFから離れて少女がメイクをしたりする場面を連想された方がいらっしゃいました。「だと」の部分が擬人法になっているのが惜しかったという意見もありました。

9 芋煮会手足もぞもぞするのだわ ◎○●
これも選の集まった句でした。外部の方曰く、芋煮会は東北では花見のようによくある行事だそうです。フレーズ含めて、かわいらしいという意見が出ましたが、よくも悪くも、『アキタランドゴシック』のアキタちゃんや『ファイアボール』のドロッセルお嬢様のイメージで読まれていて、それが美点にも欠点にもなるといった印象でした。芋の手足がもぞもぞしているのではないかというホラー解釈も。

10 朝寝してタイムトラベルほしいまま ◎●
これも逆選と特選の入った句でした。日常の中のSF感を高く評価する声が大きかったです。普通はSFと言えばまず壮大さを目指してしまいがちかもしれないけど、日常のちょっとした要素としてのSFもあるし、そういう目の付け所が素晴しいとのことでした。一方で、日常SFもよくある(『ドラえもん』とか)という声や、日常あるあるといった感じが川柳っぽさに繋がっていたという批判もありました。

11 金風よ惑星のハトにフィギュアに ●●
逆選が二つ入りました。素材が多いことや、「フィギュア」の指す言葉の曖昧さが、解釈の多様さよりもむしろ、イメージを結ばない原因となっているといった声や、そもそも語呂が悪いという意見等がありました。しかし、作者曰く、実は今回投句してくださった菅浩江さんの著作『そばかすのフィギュア』に対する挨拶句だったとのこと。『プリズムの瞳』の「プリズム」とも迷ったそうです。

12 匂い立つ新芽の群れと水銀灯
「水銀灯」という言葉とそれ以外の部分のイメージの差に面白さを感じる方は少なくなかったのですが、いまいちイメージを広げられなかった方が多かった印象です。サイバーパンクかもしれない。

13 子猫では食べ足りぬ羽根の成長期 ○○
「子猫」が春の季語で、「成長期」という言葉や獰猛な感じが生命力を感じさせ、春らしいと評判の良かった句です。グリフォン的なものを想像された方から、チャイナ・ミエヴィルの「使い魔」のような有機物と無機物の混ざったクリーチャーを想像された方までいらっしゃって、人々のクリーチャー観の差も楽しかった印象です。

14 星月夜日本沈没してもなほ ◎
句評で輝いた句です。小松左京の『日本沈没』は当然として、普通に読んでも、「沈むべき運命である日本列島が、長い時間の流れの中で沈んでいくものの、一方で星月夜は変わらない」という情景として読めるとのこと。大変SFらしい読み解きに賛同の声があがりました。

15 秋萩や猫のオットー今いずこ
作者を除いた全員が元ネタを知らないということで言及されず、なんとも申し訳ない感じになってしまった句でした。「猫のオットー」は、神林長平の『死して咲く花、実のある夢』からの引用だそうです。

16 きょうの秋部屋の数だけ時空あり ○○
「きょう」が「京」となり、合宿部屋で色々と行われる様はまさに「部屋の数だけ時空あり」と、つまりは京フェスの挨拶句という素敵な気遣いのこもった句でした。そのままでもSFとして読むことができ、山尾悠子の「夢の棲む街」や、あるいは「無限ホテル」ネタ、『四畳半神話体系』等が挙がってこれも評判の良かった句です。

17 星虹をくぐりて枇杷の実を腐す ◎
これまた句評で輝いた句です。「卯の花腐し」=「雨」と同じ様な読み方で「雨」を連想し、そこから「虹」にもつながるし、という具合に魅力的な読み解きが行われました。「雨」に直接言及せずに、連想させるところが上手いとのこと。また星虹と言えばスターボウ、スターボウと言えばワープということで、それが枇杷の実が腐っていく時間変化に連関しているところが良いという意見もありました。

18 夜半の夏電気羊の夢も見ず
「電気羊」と「夢」はやはり、某有名作を踏まえると言葉が近いので、イマイチとの声が支配的でした。あと実はSF句会の記事でサンプルとして挙げた代物でした。

19 流れゆく時間を飲んで青嵐 ○○○
言葉の流れがストレートに繋がっていく気持ち良さと、「青嵐」という季語の「これしかない感(司会曰く、『動かない季語』)」に賛辞が集まりました。中には、『百鬼夜行抄』のメインキャラにして妖怪の「青嵐」を連想してしまって泣けたという方もいらっしゃいました。また、円城塔『Self-Reference ENGINE』を連想したという方も。イベントで時間がぐちゃぐちゃになったあのイメージですね。

20 冬の暮きのうは蛇を編みました ◎
これは外部からの句評で大きく盛り上がった句でした。女の子らしい可愛らしさと、キリスト教における蛇(つまり作り手は「神」?)といった隔たったイメージが両立している点が素晴しいとのこと。ほんわかした日常感とSF的な要素のギャップというのは、SF俳句のキメ方としては正攻法なのかもしれませんね。「(この句)かわいいやろ」と言う作者に対して「かわいいー」と声がかけられる場面もありました。

21 マフラーを電気羊の毛で編む日
これまた、それぞれの言葉が近いとの意見が支配的でした。しかし「電気羊」が入った句は今回共に評判が悪く、駄目季語ならぬ駄目SFワードの烙印が押されかねない状況ですが、今後のSF句会において「電気羊」を使った良い俳句が出ないかなと願うばかりです。

22 厚底はゴーレム除けの冬支度 ○○●
女子力俳句として賑やかに句評が展開されました。季節の変わり目にオシャレに立ち向かう、あの戦闘準備に似た気合の入れ方は、まさにゴーレムも厚底で踏みつぶさんばかり、とのこと。「ゴーレム」とは嫌な男の事を指すのではないかという外部の声もありました。逆選では、「冬」という特定の季節感を強く出すのがちょっと微妙との意見も(ちなみに「冬支度」自体は秋の季語です)。

23 蝉生まる音をたよりによみがえる ○○
聞こえない音をたよりに生まれてくるのは何か、という点で議論が進みました。ゾンビ、蝉喰いロボ、夏っぽいループものの時間SF、『キャリー』のラストシーン等々と意見は色々出ましたが、作者によればどうも『ぽっぺん先生 地獄へようこそ』のラストシーンだそうです。地獄から甦った人々が、アスファルトの下に閉じ込められた蝉の幼虫たちを見るという場面を幼少期に読んだ記憶が書かせたとのこと。やっぱゾンビ俳句だし『キャリー』じゃーん、と囃し立てるギャラリーが賑やかでした。

24 熾天使が飛びて秋刀魚の焼くる暮れ ○
これも「熾天使」の荘厳なイメージと、秋刀魚の日常的なイメージを対比させたSF俳句ですね、というのが意見を集計した印象です。『ヨハネスブルグの天使たち』を連想した方も(あれは落ちてますが)。

25 東風吹かば星を渡れよ銀河虫
東風と銀河の言葉のズレが気になる方が多かったです。季節的にも、言葉のスケール感的にも、ということですね。銀河虫という言葉が面白いという方もいらっしゃいました。作者曰く、恒星間航行や惑星入植といった背景を匂わせたかったとのこと。


以上となります。

さて、これを読んでSF句会に参加・見学したいと思ったあなた。
来年も有志はSF句会を企画するつもりですので、是非ご参加ください! 待ってます!

また、句会の様子を文字起こししたテキストを会誌にまとめる予定ですので、そちらもしばしお待ちください。
posted by KUSFA at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 京フェス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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