2011年10月07日

本格ライトノベル大賞32選

本格ライトノベル大賞選考会を明日に控え、今回は本格ライトノベル大賞のレギュレーション内の作品群から「本格ライトノベル大賞32選」を作成いたしました。


《丘ルトロジック》シリーズ 耳目口司/まごまご
角川スニーカー文庫 第15回スニーカー大賞〈優秀賞〉
既刊『丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ』『丘ルトロジック2 江西陀梔のアウラ』『丘ルトロジック3 女郎花萩のオラトリオ』
変態・変人・常識外ればかりが集まる異形の青春ラノベ。溜め込んできた世界に対する憤りを、躊躇いなく叩きつけるさまには爽快感すら覚える。今年の本選エントリー作。

《子ひつじは迷わない》シリーズ 玩具堂/籠目 角川スニーカー文庫
第15回スニーカー大賞〈大賞〉
既刊『子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき』『子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき』『子ひつじは迷わない 泳ぐひつじが3びき』
 お悩み解決承りますという体でありながら、相談を受けるごとに解決側の考えや性格が浮き彫りになっていく構成はある意味で挑戦的。ラブコメとしてのニヤニヤ度もさりげなく高い。

《アイドライジング!》シリーズ 広沢サカキ/CUTEG 電撃文庫

第17回電撃小説大賞〈金賞〉
既刊『アイドライジング!』『アイドライジング!(2)』
 百合+バトル+スポ根が彩るシンデレラ・ストーリー。盛り上げどころを過たず盛り上げるストーリー運びに、女の子同士のイチャイチャが華を添える。今年の本選エントリー作。

《魔法科高校の劣等生》シリーズ 佐島 勤/石田可奈 電撃文庫
既刊『魔法科高校の劣等生(1) 入学編〈上〉』『魔法科高校の劣等生(2) 入学編〈下〉』
 遅れてやってきた大型新人。Web小説出身でありながらあまりにも危なげない筆致は貫禄を感じさせる。緻密な設定と、最強キャラを地でいく兄妹が見所。

『空をサカナが泳ぐ頃』 浅葉なつ メディアワークス文庫
第17回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉
 あんまりラノベじゃない一冊。いつかに置き忘れてきた夢と青春を、奇妙なタバコを縁に知り合った奴らが周回遅れで取り戻す話。少しひねくれていた主人公の性根が、話の進むごとに素直になっていくところには、ちょっとした感動を覚える。

《変態王子と笑わない猫。》シリーズ さがら総/カントク MF文庫J

第6回MF文庫Jライトノベル新人賞〈最優秀賞〉
既刊『変態王子と笑わない猫。』『変態王子と笑わない猫。2』『変態王子と笑わない猫。3』『変態王子と笑わない猫。4』
 頭の中がだだ漏れの主人公と、笑わないヒロインの繰り広げるラブコメディ。コミカライズの展開も順調で、近年のMF文庫Jの攻勢からするとアニメ化の最有力株。青田買いするなら今。

『○×△べーす (1)ねっとりぐちゃぐちゃセルロイド』 月本一/日高フウロ ファミ通文庫
第12回えんため大賞〈特別賞〉
 主人公がトラウマを持っているんだろうな、と示唆するプロローグと裏腹に、ギャグを基調に進めたストーリーを、きっちりシリアスに落とす技法はスポ根のそれ。思わず目頭が熱くなる。

《犬とハサミは使いよう》シリーズ 更伊俊介/鍋島テツヒロ ファミ通文庫
第12回えんため大賞〈優秀賞〉
既刊『犬とハサミは使いよう』『犬とハサミは使いよう2』『犬とハサミは使いよう3』
 罵詈雑言と、DV気味の掛け合いで描かれる、犬と美人作家のイチャイチャコメディ。基本的にはそこが見所でそこが気に入れば非常に楽しい。今年の本選エントリー作。

『二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない』 朝田雅康/庭 スーパーダッシュ文庫 
第9回スーパーダッシュ小説新人賞〈佳作〉
 一冊まるごと、読者への挑戦状・名前当てパズル編。下読みの人間が途中からメモを取り始め、ついには答え合わせのため読み返しすらしたという逸話を持つ本作。文章でキャラを書き分けた作者もすごけりゃ、それに応えて絵でも描き分けた絵師もすごい。今年の本選エントリー作。

《物理の先生にあやまれっ!》シリーズ 朝倉サクヤ/pun2 スーパーダッシュ文庫
全二巻『物理の先生にあやまれっ!』『物理の先生にあやまれっ! 弐号機』
 ロボットを絵にしなくても表現できるロボットもの!
という作者的に画期的なアイデアによって打ち切りコース一直線。見所は打ち切りを逆手に取った超投げっぱなしエンド。いっそ惚れる。

『僕の妹は漢字が読める』 かじいたかし/皆村春樹 HJ文庫 
第5回ノベルジャパン大賞〈銀賞〉
 強烈なオオガワラ文体で界隈を席巻した今年の話題作。意外なほど真摯に書くことと、それに向き合うことをテーマに綴られている。

『赤鬼はもう泣かない』 明坂つづり/白身魚 ガガガ文庫 
第5回小学館ライトノベル大賞ガガガ文庫部門〈審査員特別賞〉
 終始おかしなテンションで独白し続ける主人公の言動が、救うべき女の子となすべきことを見つけたときに変わっていく、その力強さが魅力のひとつ。俺設定ででっち上げられた伝奇っぽさも、味がある。

『脱兎リベンジ』 秀章/ky ガガガ文庫 
第5回小学館ライトノベル大賞ガガガ文庫部門〈ガガガ賞〉
 特技はあっても自信の足りない主人公が、はぐれ者たちの自信あふれる生き方に感化されて立派に反逆していく話。序盤に明かされるのでネタバレするが、NTRスキーにもオススメ。

《神戯》シリーズ 神世希/mebae 講談社BOX 
第2回講談社BOX新人賞“Powers”〈Powers〉
既刊『神戯―DEBUG PROGRAM― Operation Phantom Proof』『未来方程式―fate equation―』
 新人の一発目からこれかよ! と叫びたくなる分厚さ。それに反比例するような読みやすさで展開される物語は、間違いなくエンターテインメント。流石の講談社BOX。今年の本選エントリー作。

《マガミ》シリーズ 新沢克海/05 講談社BOX
第2回講談社BOX新人賞“Powers”〈Powers〉
既刊『コロージョンの夏』『フェイブルの海』
 軽妙な会話と道化的に鈍感な主人公によって演出されるキャラクター小説。キャラクター小説にはまだまだ切り開く地平があると感じさせてくれる。今年の本選エントリー作。

『Powers Selection [新走]』 新沢克海、井上竜、岩城裕明、ganzi、小柳粒男、杉山幌、針谷卓史、円居挽、円山まどか、森野樹 講談社BOX
 Powersとその前身である流水大賞から出てきた作家たちによる魅惑のアンソロジー。講談社BOXのパワフルさを味わうには最適の入門書に違いない。

『奥ノ細道・オブ・ザ・デッド』 森晶麿/天辰公瞭 スマッシュ文庫
 「奥の細道」という紀行文を、ゾンビものの文法でアレンジした結果がこれ。挑戦的というよりむしろ自由すぎる作品が出てくるスマッシュ文庫は底知れない。

『中二病でも恋がしたい!』 虎虎/逢坂望美 KAエスマ文庫 
京都アニメーション大賞小説部門〈奨励賞〉
 京都アニメーションによる新興レーベル。他と比べて文も構成も荒削りだが、真摯なテーマ性が光る。『赤い糸切れちゃうよ・・・。』で悪いほうの話題をさらった萌え萌え文庫にも頑張ってもらいたいところ。

《ヒマツリ》シリーズ 春日部タケル/も 角川スニーカー文庫
第15回スニーカー大賞〈ザ・スニーカー賞〉
既刊『ヒマツリ ガール・ミーツ・火猿』『ヒマツリ2 アイスドール・ウォーズ』
 ちょっと懐かしくすら感じる学園異能もの。くちの悪いしゃべるぬいぐるみなんて造形がもう。ドジで頑張る女の子がそいつとパートナーを組むなんてますますもう。

《はたらく魔王さま!》シリーズ 和ヶ原聡司/029 電撃文庫 
第17回電撃小説大賞〈銀賞〉
既刊『はたらく魔王さま!』『はたらく魔王さま!2』
 最近とみに増えた魔王と勇者ものの変奏のひとつ。コメディ仕立てのくせに、アルバイト残酷物語がフィーチャーされていて心が痛い。

『霧こそ闇の』 仲町六絵 メディアワークス文庫 
収録作「典医の女房」第17回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉
 典医というのは、殿様付きの医者のこと。今の奈良、大和の筒井を舞台に、のんびりとした医者とあやかしの見える女房の巻き込まれる伝奇的騒乱を、時代ものの筆致で描き出す。巧すぎてカテゴリエラー。

《わたしと男子と思春期妄想の彼女たち》シリーズ やのゆい/みやびあきの ファミ通文庫 
第12回えんため大賞〈優秀賞〉
既刊『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 1 リア中ですが何か?』『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 2
外泊ですが何か?』『わたしと男子と思春期妄想の彼女たち 3 ラブメイドですが何か?』
 男の子が妄想する理想の女子像が見えてしまってさあ大変――というドタバタラブコメディ。恋に友情に、頑張る女の子はかわいい。

『彼と人喰いの日常』 火海坂猫/春日歩 GA文庫 
第3回GA文庫大賞〈奨励賞〉
 人外を人外として描くことに終始した一冊。共生する人外という「力」を手に入れた彼が何を選び取るか心を固めるまで。決断主義、という言葉が脳裏をよぎる。

『寄生彼女サナ』 砂義出雲/瑠奈璃亜 ガガガ文庫
第5回ライトノベル大賞ガガガ文庫部門〈優秀賞〉
 寄生虫がかわいい女の子でした――という出落ち気味の始まりから展開する、共生生活ラブコメディ。相互理解の残酷な一面も描き出す。ドラマCD化も決まり波に乗っている。

《問題児たちが異世界から来るそうですよ?》シリーズ 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

既刊『問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!』『問題児たちが異世界から来るそうですよ? あら、魔王襲来のお知らせ?』
 現代でそのあまりに強すぎる力を持て余した問題児たちが、異世界に召喚されてなお規格外の強さを発揮してバッタバッタと敵も問題もなぎ倒していく話。いわゆる俺TUEEEというやつだが、その爽快感が見所のひとつ。

《青春ラリアット!!》シリーズ 蝉川タカマル/すみ兵 電撃文庫
第17回電撃小説大賞〈金賞〉
既刊『青春ラリアット!!』『青春ラリアット!!(2)』
 不器用に生きるしか出来ないバカどもが、各々の恋と目的に向かって友情の手助けを借りて突っ走る話。突っ走らせるだけのテンポと掛け合いでもって、話に引きこまれてしまう。

『Happy Death Day 自殺屋ヨミジと殺人鬼ドリアン』 望公太/晩杯あきら GA文庫
第3回GA文庫大賞〈優秀賞〉
 奇妙な人生哲学でもって自殺を決意する語り部が、生前の交友関係をポジティブに断ち切っていく話。アッパー系の読み味が、自殺をテーマに据えながらも重くなりすぎないバランスにも効いている。

『キミとは致命的なズレがある』 赤月カケヤ/晩杯あきら ガガガ文庫
第5回小学館ライトノベル大賞ガガガ文庫部門〈優秀賞〉
 端正な筆致で描かれる、サイコ・サスペンス。失われた記憶と、不安を煽る描写の力が物語へと引き込んでくれる。

『ブレイク君コア』 小泉陽一朗/きぬてん 星海社FICTIONS
 広義のライトノベルを謳ったときたびたび範疇に含まれる、ファウスト直系の青春エンタ。連続殺人事件と人格入れ替わりをめぐる、外連味たっぷりの大騒動が本作の魅力である。

『成金』 三三珂/碧風羽 メガミ文庫
第1回メガミノベル大賞〈編集部特別賞〉
 何故メガミ文庫。何故格闘技もの。異色尽くしの一冊は男臭い異種格闘戦もの。異能もなく、まともな意味でのヒロインもなく、愚直にプロレス対総合格闘技をやり抜くパワフルさは、格闘ロマンの系譜ゆえだろう。

『リヴァイアサンのセカイ』 チャー/千田衛人 ガンガンノベルズ
 ヴァンパイアはじめとする異形が暮らす世界で、津山三十人殺しをきっかけに鎖国を解いた日本、という外枠は、むしろ伝綺よりもオルタネート・ヒストリーの域。キャラクター小説であることを半ば否定している展開は好みの別れるところでもある。

『少女禁区』 伴名練/シライシユウコ 角川ホラー文庫
第17回日本ホラー小説大賞〈短編賞〉
 31本まではあっさり決まったんだけど32本目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に応募時タイトル「遠呪」を選んだ。角川スニーカーから始まって角川ホラーで終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、京都大学SF・幻想文学研究会への改称後の方向性を内々に決定付けた一冊でもあるし、紹介する価値はあるのだけれど、もっと他にいい作品がありそうな気もする。
 というわけで、本格ライトノベル大賞の意図に沿って、もっといい32選入り作はこんなのどうよ、というのがあったら教えてください。
「駄目だこのSF研は。俺がちゃんとした32選を作ってやる」というのは大歓迎。
posted by KUSFA at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 本格ライトノベル大賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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