2010年11月18日

本格ライトノベル大賞選考座談会体験版

先のエントリで宣伝した京都大学11月祭で発行予定の新刊、
Workbook95 境界線上のSF・上
こちらに収録します、
合宿企画で開催した「本格ライトノベル大賞」選考会の模様をまとめたレポート
の体験版をご用意しました。

「続きを読む」から体験版をどうぞ!


このあたりも読んでおくと流れをよりよく把握できるかもしれません。
http://ameblo.jp/ipocketedition/entry-10622163627.html
http://ameblo.jp/ipocketedition/entry-10623252549.html


 十月九日深夜。日付が変わって三十分ほど経った頃。京都SFフェスティバルの合宿会場の片隅で、第一回本格ライトノベル大賞受賞作の選考座談会が始まろうとしていた。旅館さわやの一室に集まった京大SF研の選考委員たち。あらかじめ選出しておいた候補作六作の中から大賞を決めようという公開討論の場は、物見高い京フェス参加者の中でも特に物見高い聴衆が多数集まり、独特の熱気に包まれていた。オブザーバーとして迎えた大手ライトノベル評論サイト「平和の温故知新」管理人の平和氏もその名を思わせる仏尊の顔(アルカイック・スマイル)を浮かべている。本会のゲストの幾人かも、趨勢を見守ろうと会場に姿を現した。主催である京大SF研ライトノベル班の準備が整ったことを察知したのか、おのずと会場の空気が変わったところで、いよいよ座談会は始まった。
 われわれが本格ライトノベル大賞の主催に至った経緯はこうだ。コミックマーケット78――通称夏コミに合わせ製作した京都SFフェスティバルの宣伝ビラ。多少なりと注目を集めればいいなと十分で決められた本格ライトノベル大賞という文言。本来ならば小規模に纏まるはずのこの賞は、このビラをあるツテで受け取った一迅社文庫編集長T澤氏が『本格ライトノベル大賞』という煽り文句を真に受けブログをアップしたことから火がついた。アンチマジカルがノミネートされたことを喜ぶ文章。本格ライトノベルの“本格”とは一体何なのかという疑問。変格ライトノベルをやろうという提案。おそらく、ブログのネタにちょうどいいというくらいの深い考えもなくアップされたであろう記事が、われわれの仇となる。記事に食いついた面々が2ちゃんねるにコメントを残し、それを面白がった人物がまとめブログを上げる。twitter界隈でも耳ざといライトノベルサイト管理人たちが一迅社文庫編集部のブログを見、決まって同じ問い掛けを残す。そう、『本格ライトノベル』って一体なんだろう、と。
 本格推理小説という言葉がある。今や“本格”といえば決まってそのことを指す魔法の言葉。対置としての変格、後継としての新本格、類義としてのパズラー、反論としての社会派といった、派生概念や潮流を多数生み、今なお推理小説とは何かという議論における存在感を失わないミステリ界の重要概念だ。「あるべき推理小説のかたち」という共有幻想だと言い換えてもいい。ここではその定義には触れない。しかしその姿勢には触れる。本格○○が理想的な○○小説を意味するのならば、本格ライトノベルとは一体どのようなライトノベルを指すのかという問い掛けに繋がるからだ。
 だがしかし、本格ライトノベル大賞を主催したわれわれ京大SF研であっても、その意見は未だ統一されていない。ライトノベルらしい話、ライトノベルでしか出来ないものを探すという共通認識は持っている。今回の賞にあたって、内部での選出レギュレーションも制定した。それでもなお問題は残る。ライトノベルらしい話とは何なのか。ストーリーは、キャラクターは、設定は。この問題に結論が出ないこと自体が既に結論を物語っている。本格ライトノベルという概念自体はあまりにも若すぎる、幼すぎる。今はただ、本格ライトノベルとは何かという主題に対し、われわれ(この場合のわれわれには、この文章を目にしたアナタも含まれている。そう、本格ライトノベルに興味を持つアナタだ)の間で意見の擦り合わせを続けるよりほかない。第二回、第三回と本格ライトノベル大賞が開催されるうちに、あるいは当初から本格ライトノベルを名乗る小説が出版されるようになってから、ようやく本格ライトノベルという概念が共有されたといえるであろう。将来、われわれの活動が多くの批評家・評論家たちから理解をもって受け入れられ、評価を受ける状況を願っている。
 余談ではあるが、賞の理念に対してある方から「(数あるライトノベルの中から候補作・受賞作として順位付けをするという行為が本質的に持つ)自分たちはオタクのエリートだという、鼻持ちならない自尊心から逃げてはいけない」とアドバイスをいただいている。この言葉はわれわれが対外的に(おもね)ることなく受賞作を選ぶ決め手のひとつになった。誌面を借りて感謝を表したい。
 話を経緯に戻そう。そういった意味で、企業のいち部門がその公の広報において、本格ライトノベル大賞の存在を喧伝したことは、大いなる好機であり同時に危機でもあった。大学のいち文芸サークルによる細々としたビラ配布・ブログ告知にとどまらない注目を集めてしまった。元より注目を集めるために恣意的に選んだ本格の二文字であったが、狙い以上の注目を集めてその重みはいや増す。有り体に言って、われわれも引っ込みがつかなくなった。これは生半可なことはできないぞ、と。

 元々、二〇〇七年度の『SFが読みたい!2008年版』投票から毎年、京大SF研は国内作品の投票にライトノベル枠というかたちで一枠を割いている。新人か新人に近い執筆歴の作家の小説で、なおかつ他からの注目の薄いもの。一柳凪『みすてぃっくあい』、森田季節『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』、三原みつき『ごくペン!』。昨年度の投票に関しては内部でも紛糾しており、投票当時インパクトのあった新人作品かつSF要素がなくもないといった理由から『ごくペン!』に投票している。しかし、前述したビラでは昨年度受賞作は架神恭介『よいこの君主論』となっている。昨年度は本当に評価が割れ、石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』とあわせた三作品が候補としてあげられていた。それにあわせて、大学読書人大賞に『よいこの君主論』、『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』は投票されていたが、最終的な決定はなされていなかった。その後、「耳刈ネルリ」シリーズを推すことに決まったが、締切のため、ビラ責任者が『よいこの君主論』を昨年受賞作として入れてしまったという苦いいきさつがある。『ごくペン!』と『よいこの君主論』を貶めるつもりは微塵も無く、SFかどうかという観点を除けば京大SF研が推薦する作品で間違いはない。ただ、実質的な昨年度のライトノベル枠は「耳刈ネルリ」シリーズだと思っていただければよい。
 この「ライトノベル枠」に名前を付けて、選考会をオープンなかたち――京フェスの合宿企画――でやろうというのが夏コミビラ配布時点での企図だった。本格の二文字が功を奏して、ひとりでも多くに「この年の京大SF研オススメの一作」が知られるようになればよいと考えていた。現在でもその意図は薄れておらず、大賞に選ばれた作品が相応にSFとしても評価できるならば、「SFが読みたい!」にも投票しようと考えている。
 ところが、だ。結果的に一迅社文庫編集部のおかげで、レギュレーションの見直しと候補作の再選定を余儀なくされた。内輪で通じるなあなあの、慣例的なレギュレーションから、文書化されたレギュレーションへ。インパクト重視の、いわばネタであることに自覚的な候補作から、衆目に晒して本格ライトノベル大賞の名に恥じない候補作へ。

 一つ、広義のライトノベル作品であること。
 一つ、前年度十月一日から本年度九月三十日までに出版された小説であること。
 一つ、新人作家あるいはライトノベル執筆歴が新人に準じる作家の、公称されている同一名義の範囲でデビューから間もない作品であること。
 一つ、作品の出来に対して、未だ正当な評価がなされていないと選考者の意見が一致すること。

 夏コミ時点での候補作は、『アンチ・マジカル〜魔法少女禁止法〜』『破小路ねるのと堕天列車事件』『スワロウテイル 人工少女販売処』『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』「B.A.D.」シリーズの五作だった。ここから『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』を撤回し、『ストレンジボイス』「竜王女は天に舞う」シリーズを加えた六作が最終的な候補作になった。
 尤も、レギュレーションは意図的に解釈の余地を残してあるし、候補作についても、特に今回に限っては変更を加えたことでかえって疑問を持たせてしまった感はある。こういった部分の脇の甘さは今回初めて賞を主催することによる経験の浅さと、急遽方向転換したことで生まれた齟齬によるものだ。ある意味で京大SF研が単なるいち文芸サークルだということ、それ故にフットワークが軽いことをよく象徴している。

 前置きはここまでにして、座談会の流れに戻ろう。こちらでもおおよそ同じような前置きを話しているがそれは省略する。選考委員の自己紹介のあとは、それぞれがどのように選考に携わったかの話。SFのみならずライトノベルも精力的に読む会員が特に中心となり、他の会員からの推薦作を参考にしつつ、候補作のたたき台を作る。それに対して他会員が寸評をするかたちで候補作は決定された。

 以下は、私が把握していた選考座談会のあらましである。


 ……続きは会誌で!!
posted by KUSFA at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 本格ライトノベル大賞 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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