2009年04月25日

4月24日読書会『1984年』

本日はジョージ・オーウェル『1984年』読書会。現役会員からの参加者はトマ村、魚、ふな、蕎麦、里々、空の六人。他にもSFファンダム繋がりでお世話になっているhikaさんや、さらに初見の方とリピーターの方を合わせて四人の方が見学に来て下さいました。

新歓の日程もちょうど半分に入ったということで、前半の山場ともいえる読書会。担当者の蕎麦さんの作製されたレジュメをもとに、いつも以上に活発な議論が交わされました。以下、話された内容についてのメモ。

◆ラストについて
・ラストはこう終わるとは思わなかった。
・少なくともエンターテイメント的ではないよね。
・それをいうなら小説としてもどうだろう。
・全体主義に警鐘を鳴らすという意味では妥当な終わり方とも。

◆社会の問題ではなくウィンストン個人の問題として読むと?
・ウィンストン個人の物語は(ある意味)ハッピーエンド。
・むしろウィンストンが幸福であればあるほどバッドエンドが際立つのでは?
・ウィンストンを悩ませ続ける母親と妹についての記憶。
・家族の愛に欠けた男が、国家というさらに大きな家族と同化するまでの物語とも読める。
・偉大な兄弟(ビッグブラザー)が兄弟と呼ばれている意味。

◆ウィンストンがネズミを怖がるのは何故?
・(描写されてはいないが)妹はネズミに喰われたのではないか。
・そのことがトラウマとなってウィンストンを苦しめている可能性。

◆記憶と二重思考
・ラストで母親との幸福な記憶を思い出すが、それを偽りであると退ける。
・あれだけ根を張っていた母親との思い出を最後には遠ざける。→記憶からの解放?

◆「ジューリアにやってくれ!」
・ネズミが最大の恐怖であり、ジューリアが内心の最後の砦であることはわかるが、それでも101号室での拷問によってジューリアを差し出す心境になった理由がいまいちよくわからない。
・妹がネズミに喰われたとすれば、ネズミへの恐怖が妹や母親を差し出すこと、つまりは彼女たちに重ね合わされたジューリアを差し出すことを連想させたとも考えられる。

◆「オレンジとレモン」の歌の意味
・歌を覚えている=過去を覚えているという指標以外の意味はあるのか。

◆ディストピアについて
・次の『ハーモニー』読書会でも多分ディストピアについては話すよね。
・読書会二回分の濃厚なディストピアトーク!
・つぎのディストピアにつづく。
・ディストピアの綴りはDis-topiaではなくDystopia(ラテン語)。

◆情報統制について
・この作品におけるディストピアを可能たらしめているのは情報統制。
・インターネットが発達した今、別の種類のディストピアの可能性が開かれる?→『ハーモニー』読書会へ

◆オブライエン×ウィンストン
・ネズミプレイ!?
・「ほうら、もう一つ穴が開いてしまうぞ?」
・「7年間ずっと君のことを見ていた」

◆他作品との比較
・『1984年』、『すばらしい新世界』、『華氏451度』、『ユートピア』
・『1984年』は政治寄りだが、『すばらしい新世界』は生物学寄り。
・それぞれの時代観を色濃く反映?
・「階級」という概念は二者に共通している。→マルクス主義
・オーウェルもハクスリーも英国人。→イギリスの階級制

◆学術的に見た『1984年』
・キッシンジャーの限定戦争論。
・ネイションの不在と緩やかなリージョナリズム。
・社会情報論的な視点からも見ることが可能?→でもこの世界って情報の価値が限りなく低いよね。
・検索技術についての余談。

◆体操について
・朝の体操は馬鹿っぽいよね。
・身体への支配という観点から見ると興味深い。
・フーコーの規律権力。行進の誕生について。

◆革命について
・プロレ革命は存在しないというゴールドスタインの説は正しい?
・まずブルジョワジー革命が起こり、そのあとにプロレタリア革命が起こる。(マルクス)
・歴史的には実際はブルジョワジー革命しか起きていない。

◆ビッグブラザーについて
・ビッグブラザーがビッグシスターならよかったのに。
・シスターにはむしろsurrenderするべき。

終了予定時間の八時を三十分ほどオーバーしてしまうほど中身の詰まった読書会。それでも語るべき内容を語りきったという感覚はありませんでしたが、その辺の語り漏らしは次回の『ハーモニー』読書会でより詳細に触れましょう、ということで読書会は終了となりました。

終わったあとは参加者全員でルネへ。入口でhikaさんがお帰りになり、残ったメンバーで食事。食事後は会員の家へと向かい、読書会で真面目な話をしていた人たちとは思えないようなくだけた会話を続けつつぐだぐだとしておりました。

途中で狂乱さんが、さらに見学の方が帰られたあとに百寅さんも姿を現し、さらなる混沌へ。僕は一時半を過ぎたあたりで帰宅しましたが、残りのメンバーは僕が帰ったあともずっとだべり続けていたのでしょう。もしかしたら今この時も……。
posted by 里々 at 03:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 読書会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本記事における
・「オレンジとレモン」の歌の意味
に関してですが、過去を覚えている以外にも、

『Here comes a candle to light you to bed,
Here comes a chopper to chop off your head.』
(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%81%A8%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3

とあるように、ある種のウィンストン達への、党の側からのメタ視点でのメッセージのようにも思いました。
(実際は、断頭台にいくのではなく『ビッグ・ブラザーを心から愛』することになりますが……まぁある種の「人」として死んだ、とも取れそうですが。)
Posted by 稲生 at 2018年01月12日 22:41
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